原子力発電の仕組み

原子力発電の仕組み

 

原子力発電といっても蒸気の力でタービン・発電機をまわして発電するという原理は、火力発電と同じである。火力発電は、ボイラーで石炭や石油を燃やして蒸気を作るが、原子力発電は、原子炉でウラン燃料を核分裂させ、その時に発生する熱を利用して蒸気を作りその力でタービン・発電機を回し、発電する。

 

ウラン235のような原子核は、中性子をぶつけると巨大な運動エネルギーを持つ2つの原子核に分裂するが、このとき数個の中性子を放出することが知られている。放出された中性子の多くは、外部に飛び出したり核分裂しない物質に吸収されるが、何割かは別のウラン原子核にぶつかって、再び核分裂を引き起こすことになる。ここで、分裂の際に放出される中性子の中の平均k個が別のウランを分裂させるものとしよう(kの値は、ウランの密度や中間物質の素材に依存する)。k>1の場合、分裂するウランの個数は時間とともに指数関数的に増加し、遂には爆発的に反応が進む(右図はk=2のケース)。一方、k<1になると、分裂数は次第に減少して、あるところで核反応は停止する。この2つの状態の境界となるk=1の状態は「臨界状態」と呼ばれ、このときだけ核反応は定常的に進行し、一定の割合でエネルギーが放出される。原子力発電の原子炉では、この臨界状態を実現することにより、コンスタントに熱を生み出している。

 

原子炉内で臨界状態を作るには、次のようにする。まず、ウラン燃料を濃縮してウランの密度を高め、炉内の状態でkが僅かに1より大きくなるようにする。このままでは、核反応が爆発的に進行してしまう(実際には、水のボイド効果などによって暴走は食い止められる)ため、余分な中性子を吸収する素材(カドミウムなど)で作られた制御棒を挿入し、核反応をコントロールしている。制御棒を炉内に深く挿入すると、より多くの中性子を吸収して核分裂は抑制され、制御棒を引き出すと、吸収される中性子が減って核分裂が促進される。定常運転中の原子炉では、常にk=1の臨界状態になるように制御棒の挿入量を微調整している。制御棒を利用して核分裂をコントロールする技術は、1942年にフェルミによって開発された。

 

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